空き家の所有者さんは手放したいから売却でと考える方が多いのに対して、利活用の希望者さんのニーズは賃貸が多い傾向にあります。特に移住を検討されている方は、地域に馴染めるかどうかの不安もあるなかでやはり購入するのはハードルが高いのだと思われます。
しかし、空き家の所有者さんからすれば、「ボロボロの空き家を貸すとなれば、ある程度修繕しなければいけないのではないか?」「そんなにコストをかけられないよ」という結論に至るのも頷ける話。
DIY型定期借家賃貸は、このようなニーズのミスマッチ感を解決する方法になり得るのではと思い自分なりに調べてみました。
定期借家契約とは
こちらについては以前の記事で、普通賃貸との違いなどをまとめましたので下記のリンクからご覧いただければとおもいますが、簡単にいうと期限付きの賃貸です。定められた期間を満了すれば物件が返ってくるので、どちらかといえば貸主さんに対する配慮がされている契約形態といえますね。
契約の更新はありませんが、両者(貸主と借主)合意のうえ再契約をすることが可能です。
でも修繕してからでしょ?
そう、民法第606条では”賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。”とありますので、賃料が発生するならちゃんと人が住める状態にしてねーっていう義務があるんです。これがなかなかお金と労力がかかるんですよね。空き家の場合は特に!そしてその問題を解決してくれそうなのがDIY型賃貸なんです↓
DIY型賃貸とは
借主さん自ら改修する場合や専門業者に発注する場合など改修工事の実施方法は様々ですが、DIY型賃貸とは借主(入居者)の意向を反映して住宅の改修を行うことができる賃貸借契約や賃貸物件のことです。
どんなメリットがあるの?
今回は、工事費が借主負担の場合のDIY型賃貸についてまとめました。双方の目線から見ると以下のようになります。
貸主
- 修繕義務を特約で免除することで現状のまま賃貸可能。
- 借主がDIY工事を行うことで愛着が生まれ長期入居が期待できる。
- 明渡し時に設備や内装などがアップグレードしている可能性もある。
借主
- 自分好みの改修ができるので、持ち家感覚で居住できる。
- 工事費用を負担する分、通常の相場よりも安く借りられる。
- 工事箇所は原状回復義務を特約で免除することも可能。
トラブル回避のために
貸主さんの不安
DIYをOKにすることでメリットがあるのはわかったけど、なんか不安だなあ…思われるのは無理もないこと。賃貸住宅の流通促進の一環として、DIY型賃貸借の普及に取り組んでいる国土交通省もガイドラインを発表したのは数年前なので身近な事例として体験されている方が少ないのかもしれません。
下記はあくまでぼくが個人的に調べたことなので、理論上可能だとしても法的に契約の整合性を保てているかは未検証です。もしここまで記事を読んでいただいてDIY型定期借家賃貸に興味をお持ちの空き家所有者さんはご参考程度にお目通し頂ければとおもいます↓
造作買取請求権の放棄
借主さんが建物に付加した造作を貸主さんに時価で買いとってくださいよと請求できる権利を造作買取請求権というのですが、修繕コストをかけられないからDIY型賃貸にしたのに、最終的に買い取ることになってしまっては本末転倒です。改修工事を前提とした賃貸であるDIY型においては多分に有り得ることかと想定されますので、これも特約という形で借主に造作買取請求権の放棄をしてもらうと貸主さんの不安は解消できるでしょう。ただ、これだけでは借主さんにとってフェアではないので交換条件として改正民法621条で定められているところの原状回復義務を免除するなどして契約の公平性のバランスをとる必要があります。
中途解約の違約金
定期借家契約の場合、原則中途解約は不可とすることが多いようですが、どちらか一方の都合でやむを得ず期間満了前に解約となった場合、違約金という形でなんらかの補償を設けておくとそういったリスクの緩和になるかもしれません。例えば…
貸主都合:借主が改修に費やした金額の130%
借主都合:退去年まで賃料+1年分もしくは貸主の定める違約金
みたいな感じが妥当でしょうか。
火災保険について
ちなみに、火災保険は両者それぞれ加入する必要があります。
貸主さんは建物に対して、借主さんは家財に対しての保険になります。
まとめ
結論、DIY型定期借家賃貸はこんな方におすすめです。
空き家の所有者
- 売却まで踏み切るほど活用について考えていない
- 賃貸してもいいけど、そのための修繕コストはかけられない
- とりあえず放置することだけは避けたい
- 将来的に家族の誰かがその空き家を使いたいと言うかもしれない
利活用希望者
- DIY改修の経験がある、もしくはやってみたい
- 古い家でも自分好みにアレンジできるならOK
- 自ら改修できない部分は業者に依頼できるだけの初期費用がある
- とにかく安く借りたい
- 小商いをやってみたい
如何でしたでしょうか?お互いのニーズがマッチングすればきっとよりよい相乗効果が生まれるはずです。空き家対策の観点からもいっそう普及していきたい仕組みと考えています。ご興味のある方、空き家のご相談などございましたらお気軽にお問合せください↓