相続登記の義務化について

この記事は約5分で読めます。

これまで相続登記の申請は任意とされていました。

相続が発生してもそれに伴って登記がされない原因として、

  • 申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少ない
  • 費用や手間を掛けて登記の申請をしても市場価値が見込めない

などの理由が指摘されてきましたが、所有者不明土地の解消・予防に向けて、不動産に関するルールが大きく変わることになりました。

なぜ義務化する必要が?

相続登記がされないことで「所有者不明土地」が問題になっているからです!

所有者不明土地は、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地または所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地のことです。

所有者の特定に多大な時間と費用を要する為、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まない、民間取引や土地の利活用ができないなど、不動産の流通における阻害要因となってしまいます。また、管理不全のまま放置されると周辺環境にも悪影響が及びます。

義務化されるとどうなるの?

まず読んで時の如く相続登記が”義務”になるわけですから、相続登記を”しなければいけない”ということなので、正当な理由なく違反行為を行った場合は罰則を受けます。

改正後の法律では相続登記の申請義務について、2つの新規則が設けられました!

①相続(遺言含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない

※被相続人の死亡を知った日ではないので、相続により不動産を取得したことを知らない場合は相続登記の義務は発生しません。

また、遺産分割の成立後についても以下の追加ルールが設けられました。

②遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければならない。

※正当な理由なくこれら①・②の義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となります。

いつから?

令和6年(2024年)4月1日から施行されます!

遺産分割協議が終っていない場合は?

上記①の通り、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記しなければなりません。しかし、遺産分割協議が終わっていないなどの事情で、相続登記をするのが難しい場合もありますよね。

ちなみに、相続人の間で遺産分割協議が成立するまでは、全ての相続人が法定相続分の割合で不動産を共有している状態になります。 この共有状態を反映した相続登記を申請しようとする場合、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定しなければならないため、全ての相続人を把握するための資料(戸籍謄本など)の収集が必要となります。つまり、とても時間と手間がかかるんです。

そこで、

より簡易的に申請義務を履行することができるようにする仕組みとして

相続人申告登記が新設されました!

どんな仕組み?

  • 登記簿上の所有者について相続が開始したこと
  • 自らがその相続人であること

を登記官に申し出ることで、相続登記の申請義務(上記①)を履行することができます。 この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されますが、 持分の割合までは登記されないため、全ての相続人を把握するための資料を揃える必要はなく、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本等を提出すればOKというわけです。

★一人の相続人が相続人全員分をまとめて申告することも可能です。

※注意

相続人申告登記自体は正式な相続登記ではありません。手続き後、遺産分割協議などを行って相続人が確定したら、その日から3年以内に正式な相続登記(名義変更)を行う必要があります。(上記②の義務)

いつから?

相続登記の義務化と同じく令和6年(2024年)4月1日から施行されます!

住所変更も義務化に!

所有者不明土地の発生を予防する為、住所等の変更登記の申請も義務化されますので併せて覚えておきましょう。改正後の法律では、

登記簿上の所有者は、住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければならない。

ということになっています。
正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料の適用対象となります。

いつから?

令和8年(2026年)4月までに施行されるそうです!

改正法施行前の登記は?

今回の法改正による相続登記の義務化は、遡及適用です。

つまり、施行日前に相続の発生があった場合についても適用されます。

現時点で不動産の相続人となっており名義変更をしていない場合は、改正法の施行日から3年以内までに相続登記を行わなければなりませんので、いずれにしても早めに済まされておくとよいでしょう。

まとめ

状況ごとに整理すると、以下のようになります。

現在、相続登記の名義変更が未完了

令和9年4月1日(改正法の施行日から3年以内)までに相続登記を行う。

改正法の施行日後に相続が発生

不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請を行う。

遺産分割協議がまとまらない

相続人申告登記を行う。

遺産分割協議がまとまった

協議が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請。

相続が発生し、自分がその不動産の所有者になったことを知ったら、3年以内に遺産分割協議を行って、確定した相続人が相続登記を行いましょう。

これが今後のスタンダードとなり、手続きにかかる費用も最小限に抑えられるでしょう。

法定相続人全員の名義の共有登記をすれば義務を履行したことにはなりますが、将来的に権利関係が複雑化するおそれがありますので、相続人全員がそのような問題点を危惧していない限り、あまりおすすめはできません。

空き家相談受け付けています!

今回の法改正について、よくわからないという方・空き家の維持管理にお困りの方など是非ご利用ください。

タイトルとURLをコピーしました