法改正2023③:相隣関係規定の見直し

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相隣関係って何?

文字通り隣同士の土地所有者が自分の土地をどう使うかを調整しあう関係を指します。庭から木が隣人の敷地にはみ出しているとか、隣地が所有者不明で草木が伸び放題など、日常生活の中でさまざまな問題を引き起こす可能性があります。このような状況を適切に管理するための法律上の規定が「相隣関係規定」です。民法の相隣関係規定はこの度の改正により大きく見直され、特に”所有者不明土地”に対する対応が強化されました。

土地の利用と管理に対する民法の改正点

隣地使用権の見直し

隣地使用権とは、ご自身の土地に関連する作業や改善を行うために、一時的に隣の土地を利用できるという権利です。しかし、旧民法では、隣地使用権が認められる範囲が「境界またはその付近において障壁または建物を建造しまたは修繕するため必要な範囲」に限定され、隣地使用権を行使する方法について具体的に規定されていませんでした。

今回の改正で、以下のようなより具体的かつ柔軟なルールが設けられました。

  1. 隣地使用権の範囲の拡大:隣地の利用が認められるケースが拡大され、建物の建設・撤去・修繕、土地の境界標の調査・測量、隣地の枝の切除など、様々な状況で隣地を利用することが認められました。
  2. 隣地の利用方法:隣地使用権を行使する際には、隣地の所有者や現在使用者の損害が最小限になる方法を選択する必要があります。
  3. 事前通知の義務:隣地を利用する前に、その目的・日時・場所・方法を隣地の所有者や現在使用者に通知することが必須となりました。
  4. 損害賠償:隣地使用により隣地所有者や現在使用者に損害が生じた場合には、償金を支払う必要があります。

ライフラインを自己の土地に引き込むための設備を隣地に設置する権利の明確化

  1. ライフライン設備設置権:他人の土地に必要な範囲でライフライン設備を設置する権利。これにより、電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることが可能となります。
  2. ライフライン設備使用権:他人が所有するライフラインの設備を使用する権利。これにより、電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を引き込むことが可能となります。

ライフライン設備の設置・使用の場合、必要な手続きや配慮が求められます

  • 設置・使用の場所及び方法については、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ぶこと。
  • 設置・使用する際は、その目的、場所及びその方法を他の土地の所有者及び他の土地を使用している者にあらかじめ通知すること。
  • 通知から設備設置・使用までには、通知の相手方がその目的・場所・方法に鑑みて設備設置・使用権の行使に対する準備をするために必要な合理的な期間を設けること。

設備の設置・使用により他人に損害が生じた場合、土地の所有者は適切な償金・費用を支払う必要があります。

  • 設備設置により土地が継続的に使用できなくなる損害に関する償金
  • 接続工事の際に接続先の設備の所有者に発生する損害
  • 接続先の設備の設置・改築・修繕・維持に要する費用(利益を受ける割合に応じて負担)

隣地が所有者不明土地である等の場合に越境した枝の切除を自らできる権利の創設

近隣生活におけるトラブルの一つに、隣地の竹木の枝が越境してきてしまう問題があります。これまでの旧民法では、このような状況にあっても自ら切除することは認められず、竹木の所有者に切除を依頼する必要がありました。しかし、所有者が協力的でなかったり、所有者不明の土地であった場合には、この解決方法が困難となる場合がありました。

新たに改正された民法では、以下の場合に、越境した枝を自ら切除できる権利が認められました。

  1. 竹木の所有者が催告後相当期間(通常は約2週間)切除しないとき
  2. 竹木の所有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき
  3. 急迫の事情があるとき

また、竹木が数人の共有である場合でも、各共有者は他の共有者の同意を得ることなく単独でその枝を切り取ることが可能となりました。これにより、竹木が越境してきて困っている土地の所有者は、共有者の一人から承諾を得ればその共有者に代わって枝を切り取ることができます。また、承諾を得られない場合でも、その枝の切除を求める裁判を提起し、切除を命じる判決を得れば、代替執行が可能となります。

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