どんな制度?
精神上の障害により判断能力が不十分な方は、ご自身で財産管理等に係る法律行為を行うことが困難な場合があります。本人にとって不利益な条件であることを理解しないまま契約を交わしてしまうと悪徳商法等の被害にあってしまうおそれがありますので、そのような事態を防ぐ為に、 後見人が法律行為を代理し本人の保護・支援を図るのが成年後見制度です。
判断能力の基準は?
成年後見制度の前提となる条件「本人の判断能力が不十分」についてですが、
どういった基準で調査するのでしょうか?
キーワードは、事理弁識能力。
つまり、判断能力が不十分=事理弁識能力の低下・欠如 となるのです。
この事理弁識能力の有無の度合いを基準として、制限行為能力者が段階的 (補助・補佐・後見) に分けられています。
制限行為能力者とは、 事理弁識能力の低下・欠如により、行った法律行為による必然的な結果の理解ができないまたは困難である人のことです。場合によっては未成年もこれに属することがあります。
家庭裁判所は診断書を作成する医師に対して福祉関係者の作成する「本人確認シート」を導入し、本人の生活状況等に関する情報提供により、医学的判断の参考としています。本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するための手続を鑑定といい、後見開始及び保佐開始の審判では、原則としてこの鑑定手続が必要であると定められています。
法定後見制度
成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。
法定後見制度は、本人の判断能力(事理弁識能力)が不十分になった後、家庭裁判所が成年後見人等の援助者を選任します。法定後見制度には3つのタイプがあります。
- 補助:支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい
→ 判断能力が低下しているまたは不十分 - 保佐:支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない
→ 判断能力が著しく不十分 - 後見:支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない
→ 判断能力が欠けている状態が通常
ここでの「契約等」とは一般に契約書を必要とするような重要な財産行為のことです。
また、「支援」とは家族や身近な人による適切な援助行為(契約等の場面で家族等が本人の反応や理解の程度を踏まえて、本人に分かりやすい言葉で説明をすること)です。
任意後見制度
任意後見制度は、将来、自身の判断能力が不十分となったときに備えるための制度で、
本人の判断能力が衰える前に後見人の候補者を本人があらかじめ選任(契約)しておくものです。
法定後見が裁判所の審判によるものであるのに対し、任意後見は契約です。
後見人候補者(受任者)と本人が契約当事者で、法務省令で定める様式の公正証書によって行われます。家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。
任意後見監督人は誰がなるの?
任意後見監督人(以下、監督人)になれないのは下記に該当する人です。
- 任意後見受任者
- 任意後見人の配偶者
- 直系血族及び兄弟姉妹
- 未成年者
- 家庭裁判所が不適当と判断した法定代理人・保佐人・補助人
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟をする(又はした)者並びにその配偶者及び直系血族
- 行方不明者
では、これらに該当しなければ誰でも監督人になれるのかというと、
そういうわけでもなさそうです。民法843条4項では、
成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
wikibooks 民法843条
という基準が定められていますので、申立人が候補者を推薦することはできますが、ほとんどの場合は弁護士や司法書士などの専門家の方が後見人の監督人として選任されるようです。
監督人選任の申立
通常、 任意後見契約の受任者が選任申立を行います。
また、本人(委任者) だけではなく、 配偶者・4親等内の親族も認められています。
まとめ
空き家の流通に伴う手続きにおいて、登記の名義を現所有者(管理者)に変更する必要があります。
その際に、法定相続人のどなたかが認知症などで判断能力(事理弁識能力)に問題がある場合、
成年後見制度を利用しなければなりません。空き家所有者の方とそのご家族の方は、
そのような可能性を考慮して任意後見制度など事前に準備されておくとよいでしょう。
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